小春の庭仕事

観た映画、読んだ本、聴いた音楽、旅した、食べた、買った、そして、思った記録です。最近は庭仕事がメインです。

歌集 「うめ・もも・さくら」

先日、心待ちにしていたある方の短歌集が届いた。



歌集のタイトルは「うめ・もも・さくら」



私の故郷近くに住まわれる80歳を超えた女性の日常歌集である。



このリログがご縁で、わたしとこの素晴らしい歌集が結びついた。





ご自身は、あとがきで、「特徴に乏しく刺激的でもない卑近な日常」を投影したと書いておられるが、知性と品格、そして色気が、バランスよく香りたつ作風である。





私自身が30年後に、この方のような感性を持つことができるかと思うと答えは見つからない。





80数年の間には、わたしなどには想像もできないいろいろな出来事がおありだったと思うに、その全てを静かに受容し、三十一文字に淡々と乗せる潔さに、生きる力をいただいたような気さえしている。





「人生を複雑にしたくない」と思ってきたが、複雑だと思っていたことは、案外、単純明快で、そんな人生を前向きにいきいていくことに価値があるのかもしれない。





    「海原に照らう秋の日静かなり生きてしおればいい日に出会う」





生きておればいい日ばかりではないことも、多くある。





しかし、長く生きて行くというのは、そんな辛さ、悲しさを長い時間をかけて「いい日」として受け入れる強さを身につけることなのかもしれない。





   志賀島に囲まれる博多湾の秋。。。



   30年前行った時には、きらきら光る海面に色とりどりの浮き輪が揺れていた。



   その同じ海を私は今度はどんな色でみるのだろう。





最期に、戦争経験者としての作者の、平和への思いを込めた作品を載せさせていただく。





     「ミサイルを打ち上ぐる国隠す国 春は日本のうめ・もも・さくら」





わたしの父も生きていれば、同じ思いを持ったのだろう。