大晦日の深夜、篠山春日神社の薪能「翁」を見ながら新年を迎えた。
NHKで放映されて以来、全国からたくさんの人がこの薪能を見にきているらしい。
関東の能楽師、梅若万三郎と梅若研能会の若手衆によるこの「翁神事」は、もう30年も前からこの地で行われているとこのこと。
梅若家は丹波猿楽の流れをくむ一派で、大晦日に故郷に帰って神事を行っている。
早めに行ったが、もう参拝する人の列ができていた。
舞台の真正面の石段の上に場所をとり、能楽師の入場をじっと待っていた。
気温はたぶん氷点下。
足からしんしんと冷えてきた。
しばらくして能楽師たちが厳かに入ってきて、演奏をはじめ、翁が腕を客席に向けて大きく広げた時に、どきりとした。
それは、舞という演技ではなく、祈祷という感じ。
単調だと思える舞にも実は深い意味が込められている。
自分の中にある日本人的心が呼び覚まされたひと時だった。
夢中になって見入っているうちに、体が冷え切ってしまった。
帰宅したらもう2時近く。
見上げれば満天の星。
その隙間から小雪が降ってきた。
そんな2008年の始まりであった。