3週間にわたり、学校のほうは文化祭というイベントに向けて、準備に大わらわであった。
バザーに出品する作品を作るため、私は毎日のようにこどもたちと木工、竹細工をしていた。
ヒノキの大きな切り株をノミで削り、サンダーをかけぴかぴかに磨きあげ、ドリルで穴をあけ、脚をつけるという本格的な作業だった。
細かい木屑が目にいっぱいはいって、涙を流しながら作った。
しかし、ヒノキは削るとものすごく良い香りがして、森の中にいるような気分になる。
木工室にはみたこともないような道具がたくさんおいてあって、チェーンソーを使う同僚を惚れ惚れと見つめていたら、こどもたちも口々にかっこいい!と言っていた。
隣の陶工室では、陶芸に堪能な同僚がいて、釜にこどもたちの作品を入れて焼いていた。
二階の機織室では、さをり織りのベテランがいて、こどもたちが織ったそれは美しい布を袋ものにしていた。
校内にそれらの作品を展示し、来訪するお客に買ってもらうわけだ。
私は、担当の生徒と作ったヒノキの丸太椅子がほしくてたまらないのだが、売約済みにしておくわけにもいかず(笑)、今回は我慢するしかない。
こどもたちは、演技もする。
和太鼓の演奏だ。
総勢36人で演奏する太鼓は、豪快でかっこいい。
三三七拍子がびしっときまると、掛け声をかけたくなる。
私は明日は撮影係りで、ずっとビデオカメラを構えていなければいけない。
カメラやテープの点検を終え、明日に備えて、黒の上下のコスチュームも準備した。
最近は、準備のために、休日返上で出勤していた。
今日も出勤だった。
この尋常でない多忙さも明日で終了だと思うと、ほ〜〜〜っと安堵感に包まれる。
部屋の明かりを少し落として、今年初のストーブ(ファンヒーター)を入れ、ハーブティーの湯気を見つめる。
最近は日記を書きながら音楽を聴くということもなかったが、今日は久々にジャズギターを聴いている。
脳のすみずみに音が染み込んでいくようだ。
目を閉じると、頭の中にジャズバーが再現される。
揺れる紫煙だとか、ゆっくり回るアナログ盤だとか、鈍くてかっているウッドベースが浮かんでは消えていく。
・・・今ちょうど「Into the Dream」という曲になった。
パットメセニーとジムホールの二本のギターが生み出す夢の世界だ。
今日は、これを聴きながら眠りにつけたらこの上なくしあわせ。