「月に立つ君のそびらのひとつほくろ告げざれば永久にわれのみのもの」 青井史
昨日は中秋の名月。
あいにく、曇り空で、流れる暗雲に見え隠れする月であった。
さて、「月」の歌といえばこれ。。
「君」と呼ばれる彼は、窓を広く開けて、月を眺めているのであろうか。
「われ」は彼の背後にいて、もしかしたら、横たわっているのかも。。
彼の精悍な背中とその向こうの朧な月を見ている。
満ち足りた時間だ。
・・・ふとその背中に、ひとつほくろを見つけた。
「このほくろ、いわなければ、永遠にわたしだけのもの。告げなければ彼本人のものでもない。」
人を愛し始めると、独占欲に囚われるのは常だ。
相手の24時間を知りたいとか、常にこちらを向かせたいとか、出来る限りの時間を共有したいとか、
その欲は底知れぬものがある。
そんなことは不可能であるのに、人はそれがわかっていて、尚、その欲から離れられない。
この歌は、相手に、なにをするでもない。
ただ、背中のほくろを見つけた、そして、想い、沈黙した。
私なら「ここにあるわ」と得意げに告げてしまうかもしれない。
作者は、どこまでも凛々しい女性だな、と思う。
独占欲のかけらもみせず、密かに小気味よく彼を独占する。
月をみる男、その背中を見つめる女。
その配置が美しく、、、また今日も夜空を見上げてみる。
欠け始めた月ではあるが、蒼く冴え渡っている。