小春の庭仕事

観た映画、読んだ本、聴いた音楽、旅した、食べた、買った、そして、思った記録です。最近は庭仕事がメインです。

やかんを持つ狸じじさま



はい、こんにちは。


実は、どうしてもお稲荷さんの横の小道から隣村に入ってみたくて、今日もいってみた。


あそこには絶対なんかいる感じがしてならんのだ。


今日は、午前中の「ばかされない時間」に行ってみようと9時に家を出た。


歩くこと40分、お稲荷さんのところまでたどり着いた。


先日、開襟シャツの若い男の人がいた畑を見てみたが誰もいなかった。


山際にたいそう大きい家が三軒ほど立っていて、たぶん、そのうちの一軒は「ととろ」が住んでいると思われる。ぐふ。


今日は、一歩でも村の中に入ろうとして、ふと後ろを振り返ると。。


古ぼけたやかんを提げて、おじいさんがこっちに向かってきていた。


(もしかして、たぬき。。)と思いながらも会釈した。


おじいさんは、にこにこと笑いながら、あたしの傍に来た。


「よいイヌやね。どこからきなさった?」


「はい、隣の○瀬からでございます。」


「ほう、それは遠いところからごくろさんなこった。で、○瀬のどこの嫁ごや?」


「はい、○○▲郎のところの嫁でございます。」


「ほほう。で、お勤めはいっとってんけ?」


「はい、週に三日ほど。でも家におるときはこの子と遊んでおります。」


「ほほう、そらその子もよろこんだるやろ。」


あたしは、おじいさんのやかんの中身が気になってしょうがなかったのだが、取ってみるわけにもいかんので、横目で見ていた。


(きっとあの中には酒がはいってるんや。きっと今から裏山で狸の宴会が始まるんや。


あ、心をよまれたらあかんからかんがえんとこ。)


おじいさんは、ひとしきり桜とあたしを交互にみて、去っていかれた。


あたしは、来た道を戻りながら、振り向きたい衝動にかられてならんかったが、怖かったのもあって、遠くの方から恐る恐るその集落を見た。


山の新緑が碧天に溶け込み、その隙間に、一筋の煙が上がった。


今日の竈(かまど)では、なんのご馳走ができるのだろう。嗚呼、よばれにいきたい。